皆様
このたび日本言語政策学会会長に選出されました西山教行です。日本言語政策学会は学会創設から20余年が経ち、言語政策という分野はアカデミアで承認され、この分野に関心を寄せる研究者は増加の傾向にあります。しかしながら言語政策研究はこれまで必ずしも研究者養成の枠組みに入っていなかった分野であり、私も含めて言語政策研究に携わっている研究者の中には、外国語教育学や外国文学、言語学など他の分野の研究を皮切りにアカデミアに参入し、その後、言語政策研究へと特化していった方々も少なからずいることと思います。その世代が次第に指導的立場となり、次世代の育成に関わるようになったことは慶事の限りです。
言語政策研究の対象は日本はもちろんのこと、世界各地に展開するもので、さらに現在の言語問題だけではなく、歴史の中での言語政策の発展や将来に向けた言語政策の提言など、研究課題は広くまた深く、理論的であるとともに実践的でもあり、枯渇することのない創発的な研究分野であります。そのため、今後も新たな研究者が思いもよらぬ問題意識のもとに学界の刷新に挑んでくることでしょう。
しかしながら、このような先端的で問題提起型の研究の評価は決して容易ではありません。その点では言語政策を専門とする本学会の研究大会や学会誌は、上質な研究の再生産を推進する上で重要な役割を担っています。アカデミアは再生産の論理により正統性を獲得するものです。言語政策研究というアカデミア共同体の存続に向けて今後とも、さらなる制度の点検と刷新を進め、後進の参入に期待したいと思います。
会員諸姉諸兄のご理解とご協力のもとに、言語政策研究の推進と存続に微力を尽くしたいと思います。
日本言語政策学会 会長 西山教行